【ネタバレなし】命を賭けて恋をする。「この恋は世界でいちばん美しい雨」は名言いっぱいの感動作だった。

どうも、兎本です。好きな映画の中に『今夜、ロマンス劇場で』があります。
その原作者であり脚本家でもある宇山佳佑さんが書いた「この世界でいちばん美しい雨」を読みました。

脚本家でもある宇山さんらしい美しい光景が目に浮かぶ「雨」と「恋」がキーワードの今作は名言いっぱい。

切ない奇跡のお話からは、恋する強さや人生についてを学びました。

あらすじ

駆け出しの建築家・誠と、カフェで働く日菜。雨がきっかけで恋に落ちた二人は、鎌倉の海辺の街で同棲中。いつか日菜に「夢の家」を建ててあげたいという誠だが、ある雨の日、二人は事故で瀕死の重傷を負う。“案内人”と名乗る男女の提案によって誠と日菜は二人で二十年の余命を授かり、生き返ることに。しかしそれは、愛し合う二人が互いの命を奪い合う過酷で切ない日々のはじまりだった―――。

『この恋は世界でいちばん美しい雨』宇山佳佑
目次

奇跡『ライフシェアリング』の仕組みが恋人たちを引き裂く

兎本

あらすじにある「愛し合う二人が互いの命を奪い合う」という文章で殺し合いでもするのか?と物騒なことを思ったのですが、そんなことはなかったです笑

ラブラブカップルな誠と日菜には“案内人”である男女から奇跡が与えられました。
それが『ライフシェアリング』です。

誠と日菜はお互いにしか見えないスマートウォッチのようなものを腕につけます。
そこにはお互い最初は10と表示されています。これは、それぞれの余命ですね。

もうひとつ表示されているメーターは装着者の『幸福量』を測っています。

この『幸福量』が10になったら、相手の命を奪ってしまいます。
反対に『幸福量』が-10になったら、相手に命を奪われてしまいます。

簡単に説明すると、上記のようなルールで「愛し合う二人が互いの命を奪い合う」ことになります。

兎本

なーんだ簡単じゃん。ふたりでハッピーなことは同じだけ喜んで、悲しいことは同じだけ悲しめばいいんでしょ?

と、安直な私は思ったわけですが、そうはいきません。

命を奪い合うことになったラブラブカップルなふたりのうちのひとり。日菜が感情が激しいタイプだったんですね。
作中では特別な体質で『幸福体質』と呼ばれていました。

兎本

うらやましい!そんな小さなことに幸せ!って感じられたらうつ病になんかなってなかったかもしれん!

『幸福体質』なので日菜はどんどん幸せを感じます。その度に彼氏の誠は命を奪われるわけですよ。

それにイライラしちゃって、誠は日菜と距離を置こうとしたり、そんな自分を責めたり……。
ふたりの関係はとってもギクシャクしちゃいます。

ここで宇山さんさすがだな!と思ったのが、イライラする誠が読者に嫌われないようにするテクニックです。

日菜は何も悪いことしてないのに誠に怒られまくるわけです。
「なんで俺の命を奪うんだ!」って幸せを感じているだけで怒られる日菜は可哀想……と読者は当然思います。

ここで誠の反省の描写がなければ、「誠はひどい奴だな!」と読者はなるわけです。

でもやっぱり宇山さんはさすがで、誠は日菜にひどいことを言う度に激しく後悔して自分を責めまくっています。

悪いことしちゃったなと気づいて反省している人のことは現実世界でも怒りにくいです。
創作の世界でもそれは同じで、読者は誠を嫌いになりにくいんです。

「誠も辛いよなぁ」「でも日菜ちゃんは幸せを感じてるだけだしなぁ」とふたりの主人公にどっぷり感情移入します。

その結果、なんて残酷な奇跡なんだ……!と『ライフシェアリング』に対して憤りを感じさせる。

兎本

『ライフシェアリング』という物語のシステムが本当にすごい。おもしろい。

恋を疑似体験できる文章

宇山さんの本は『桜のような僕の恋人』『今夜、ロマンス劇場で』もそうなのですが、恋愛の描写が美しすぎます。

彼女の笑顔を想うと、時々、涙がこぼれそうになる。

『この恋は世界でいちばん美しい雨』宇山佳佑

からはじまる誠から日菜への想いの最後の一文がとても好きです。

この幸せがずっと続いてほしい。消えないでほしい。
その願いが僕を弱虫にさせる。彼女を想うと、どうしようもなく涙がこみ上げてしまうんだ。
僕は今、涙がこぼれそうな恋をしている。

『この恋は世界でいちばん美しい雨』宇山佳佑
兎本

私はアロマンティック・アセクシャルなので恋愛感情がありません。
でもこの文章を読んで、「恋すると涙がこぼれそうになるんだ」と胸が熱くなりました。

現実で恋愛はできないけど、恋愛小説の中だと憧れの恋愛感情を疑似体験できる。

やっぱり恋愛小説は最高だぜ!となれる一文で、本当に本当に大好きです。

また日菜ちゃんが恋に落ちたときの描写も素敵です。

その笑顔を見た途端、心がふたつに割れた音がした。そこから流れ出す甘酸っぱい気持ちが全身に広がる。
そして思った。
ああ、わたし今、恋に落ちたんだ……って。

『この恋は世界でいちばん美しい雨』宇山佳佑

恋に落ちるってこんな感じなのか!と、この文章を読んでいる頭の中は大興奮でした。

兎本

心がふたつに割れるってことは、ちょっと痛いのかな?

恋愛感情って複雑で本当におもしろいです。

名言で夢や人生について考える

この小説は『ライフシェアリング』の結末がどうなるのかハラハラドキドキするだけでなく、人生についての名言や恋愛についての名言がたくさん出てきます。

私が好きな名言は誠の師匠となる方からのお言葉。

「俺たちは夢を叶えるために生きているんじゃない。誰かを幸せにするために生きているんだ」
(中略)
「人生ってのは自分と大切な誰かが幸せになるための旅路みたいなもんなんだ」

『この恋は世界でいちばん美しい雨』宇山佳佑

私は母になるという大きな夢を叶えることができませんでした。
そのことや様々なストレスが重なって、現在うつ病治療中の身です。

「夢を叶えるために生きているんじゃない」という言葉はすごく心に響きました。

兎本

夢が叶わなかったとしても、生きていていいんだという許しを得られた気がして嬉しかったです。

その続きの「大切な誰かが幸せになるための旅路みたいなもんなんだ」という言葉には、逆に少し心をえぐられました。

アセクシャルである私に『大切な誰か』なんてできるのかな?と。
私の人生の旅路は無意味なものになっちゃうんじゃないかなと、ちょっとだけ傷つきました。

でもこうやって人の心に小さな傷を残すのは、その登場人物が現実世界と同じように、しっかりとその世界に生きている証拠。

このキャラが人生を「自分と大切な誰かが幸せになるための旅路みたいなもん」とするのなら、私は人生をどう定義づけようかなと考えてみることにしました。

私は「私を一番に考えて、一番に幸せにしてあげるための旅路」を歩みたいと思います。

好きなことを仕事にして自分を幸せにするために、今、一生懸命ブログと小説を書きます。
未来の自分が笑って生きていられるように、今、大好きな文章を書くことを極めます。

そうやって自分の人生を定義づけて生きていこうかなと思えた台詞でした。

『この恋は世界でいちばん美しい雨』をオススメしたい人

この本は人生に対する名言や夢についての名言にあふれた本です。

この本をおすすめしたい人
  • 人生に迷っている
  • 恋人との関係に悩んでいる
  • 夢に挫折しかけている

この本の主人公のひとりである誠は『ライフシェアリング』で人生に迷い、夢に何度も挫折しかけます。
もうひとりの主人公である日菜は『ライフシェアリング』のせいでギスギスしてしまった誠との関係に悩みます。

そんなとき、ふたりの傍には必ず相談に乗ってくれる人がいて、導いてくれるんです。
この本を上記のような人におすすめするのは、主人公たちに似ている人たちだから。

きっと切ない恋愛物語の中で、あなたの悩みに助言をくれるキャラクターがどこかで必ず出てくるのが、「この世界でいちばん美しい雨」です。

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この記事を書いた人

文章を書くことが好きなアセクシャル。
「文章を書いて生きる」という夢に向かって努力中。
保育士・幼稚園教諭免許あり。

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